大阪府の私立高校授業料無償化は独自に維持可能か?
国政の方で高校無償化の方針が変わった後、大阪府は独自財源のみで現状の私立高授業料無償化を維持できるのか?
僕は維持できないと思っています。
大阪の府立高校再統合についての記事の補足 - 情報の海の漂流者
国策である高校授業料無償化が取りやめになった場合の不安はごもっともだと思うが、fut573氏が思うようにそうなった場合に本当に大阪府が私立無償化*1を独自に維持できないのかが気になったので調べてみた。
1.私立高校生への授業料減免補助の全国順位(平成22年度当初予算額)
大阪府/報道発表資料
1位:大阪府(65.16億円)、2位:東京都(43.37億円)、3位:愛知県(40.11億円) 4位:埼玉県(31.75億円)、5位:神奈川県(18.93億円)
※文部科学省の調査では、国の就学支援金導入に伴い、平成22年度当初予算で約70%にあたる34県が私立高校生への授業料減免補助の前年度予算額を減額しました。大阪府は、前年度の予算と比較すると1,700万円増額しています。
大阪府が立てた予算が65億程度とあるが平成22年度のものなのであくまで参考とし、なるべく平成24年度の数値を基準に計算する。
上記の報道資料の添付資料「大阪府授業料支援補助金の概要(PDF)」を見てみると国と府の負担は以下の通りである。(通信制については割愛)
まず府の現状の負担を計算する。
統計をもとに所得区分の世帯分布を推定(※1)すると表の上から順に9%、12%、12%、10%、58%ぐらいになる。
平成24年度大阪府公立高等学校の募集人員について(PDF)の(資料1)によると平成24年度の私立の募集人員は23800人以上となっている。「以上」なので25000人にまるめる。高校は3年制なので25000×3=75000人とする。
以上から府の負担は所得区分順に
75,000×0.09×312,400=20億
75,000×0.12×371,800=32億
75,000×0.12×275,200=24億
75,000×0.10×175,200=13億
75,000×0.58×0=0
計約90億になる。平成22年度の65億よりかなり大きいのは無償化を受けて定数が増えたのと数字を丸めた影響だろう。概算なので大目に見る。
次に国の負担は所得区分順に
75,000×0.09×237,600=15億
75,000×0.12×178,200=15億
75,000×0.12×118,800=10億
75,000×0.10×118,800=9億
75,000×0.58×118,800=52億
計約100億程である。私立と併せると約190億。
つまり、大阪府の私立高校授業料無償化は大雑把に200億ほど財源があれば賄えることになる。
ただ私立は無償化できても公立高校が有料だと不公平なので公立の無償化も維持しようとすると、
上記資料より私立の募集人員は45320人。同様に45320×3=135960人。授業料は従来の144000円と考えると(※2)
135,960×144,000=約200億
よって併せて約400億程度の財源が確保できれば大阪府は高校無償化を維持できることになる。
維新の会によると大阪府市統合で4000億ほど財源が生まれるらしいので不可能ではないかもしれない。(大阪府と大阪市、統合で新組織−4000億円財源捻出狙う:日刊工業新聞)
また定員割れの公立を統廃合すれば更に財源の確保ができるだろう。
ちなみに所得制限を導入して収入が500万未満の世帯のみ無償とすると210億程度になる。(実際にはもっとフェアな負担になる制度設計が必要だろう。)
いずれにせよ200億~400億程度の財源を確保できるかが大阪府が私立高校授業料無償化を独自に維持可能かどうかの鍵になるだろう。
※1
政府統計の総合窓口 GL08020103の世帯主の年齢階級,年間収入階級,消費支出金額階級別世帯分布より。世帯主が30歳未満の世帯には高校生が扶養されていることはほぼないと思われるので除いた。10万単位は線形補間。
■参考資料
「高校無償化」の意義(PDF)(世帯分布の考え方はこの資料のグラフを参考にした。)